2003年1月アーカイブ

伸び悩むゲーム売上、子どもゲーム増加

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● 主要メーカーから構成されるゲーム専門委員会(Fachgruppe Spiel)の発表によると、大手メーカーの2002年のゲーム・パズルの売上は前年比で11.4%の下落になったことが明らかになりました。特に前半期の落ち込みがひどかったとのこと。その中で子どもゲームは売上総数にして3%上昇したことと、年末に「ドクタービッダー(Dr.Bidder, Hasbro)」と「ヴィラ・パレッティ」の2作品がおもちゃのヒットリストに上がったことが救いとなりました。ドイツのおもちゃ市場において、ゲームは約15%を占めますが、おもちゃのヒットリストにゲームが上がることは少ないとのことです。(Spielbox

 ・関連リンク:ゲームの値上げ(当サイト)

カタンシリーズ、600万を突破

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●  コスモス社の発表によると、これまでに販売されたカタンシリーズの合計が600万セットに達しました。そのうち基本ゲーム「カタンの開拓者」は半分の300万セットを占めます。2002年単年では、基本ゲームは13万セットの売上でしたが、5月から売り出されたトラベルセットが7万セット売れました。エッセンでお披露目となった新作「アドベンチャー人類(Abenteuer Menschheit)」は3ヶ月で5万セットのセールスを記録しています。コスモス社はカタンシリーズによって1995年以来、毎年平均10万ユーロ(1200万円)の増収となったことになります。この結果から、この先もしばらくカタンシリーズが出続けると見られます。(Spielbox

『ボードゲーム天国(パラダイス)』外伝

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表紙写真『ボードゲーム天国(パラダイス)01』がついに発売された。これまで公刊されたドイツゲームの紹介をメインとする主な本としては、

『ベストゲーム・カタログ(松田道弘、社会思想社、1988・1993)』
『ザ・ゲームカタログ(JAGA監修、白夜書房、1988)』
『ザ・ゲームカタログ'90(JAGA監修、光栄、1990)』
『THE BEST GAMES'93(高橋浩徳他、ソラリス、1993)』
『BEST GAMES'94(高橋浩徳他、ソラリス、1994』
『榊涼介&林正之のマルチプレイ三昧(榊涼介&林正之、メディアワークス、1998)』
『安田均のボードゲーム大好き!(安田均、幻冬舎、2002)』
などがあるが、そのいずれにも劣らぬ内容だ。カラー写真豊富な誌面構成、国内のサークルやウェブサイト紹介、インタビューや企画記事など、その情報量は膨大で、熱狂的なボードゲームファンから、ボードゲームにあまり興味のない人まで楽しめる本となっている。

編著の「オフィス新大陸」はプロの企画・編集プロダクション。7名からなるライター・編集者・カメラマン・イラストレーターなどの若い人たちで、坂本犬之介氏が代表。これまでに指輪物語や日本史を楽しく紹介する本を執筆している。坂本氏が学生時代にRPGのサークルを運営していたのがもとで、近年仲間内でボードゲームを遊び始め、その趣味が昂じてこうした書籍を作ることになったという。

私は今年のゲームマーケットで同人誌『トイプラス』を売っているときに声をかけられた。ゲームサイト『Table Games in the World』での情報発信を評価してもらい、協力を要請される。同人誌や個人サイトではどうしても読者層が限られてしまう。より広く情報発信ができる紙媒体の一般書籍は大きな魅力だった。そして坂本氏から「日本にボードゲームを根付かせる」という熱い夢を聞いて心を動かされ、協力に応じることにした。

その協力内容はというと、製作方針への意見と原稿の執筆、そしてエッセンへの同行だった。製作方針への意見は言いたい放題のことを言って坂本氏が参考になりそうなものを拾ってくれるので楽だったが、後二者は容易ならざるものがあった。オフィス新大陸の方々とはテストプレイで何度かゲームを遊んだ。彼らがメモを取るノートに「ボードゲーム天国地獄」と書いてあったが、確かに私も何度か地獄を見た。

書いた原稿は第3章の「ドイツゲーム事情」全部、第1章のゲーム紹介で9タイトル。文字数は55,000字に及ぶ。『トイプラス』が他の方が書いた文も合わせて70,000字だったから、実質『トイプラス2』だったと言ってもよい。「ドイツゲーム事情」はドイツのゲームサイトを網羅的に巡回し、役に立ちそうなデータをダウンロードしては読み、読んではダウンロードしながら少しずつ書きためた渾身の原稿。本業そっちのけでまる1ヶ月かかっている。ゲーム紹介はオフィス新大陸の手が足りないというので急遽依頼された原稿。「締め切り3日後」という厳しさの中、まず各ゲームサイトの紹介文を一通り読み、ゲームをひっくり返してルールを読んだりしながら、焦点を絞った。この3日間、これ以外に何もできなかったのは言うまでもない。

エッセンの同行は案内係兼通訳という内容。版元の雄山閣が結局通訳の専門家を手配してくれたので、通訳としてはローゼンベルクとヨーペン、カタン世界大会の上位者たちにちょっとインタビューする程度(正確にいうとヨーペンは通訳をせず、一対一の対談だった)。だが過密スケジュールのため坂本氏と二手に分かれてからは、メインのインタビューアーとなった。もうひとり通訳がいたので言葉には困らなかったが、面白い話を引き出すには脳みそをフル回転させながら同時に気も使う。「次のインタビューまであと10分です!」…不慣れなことばかりで楽しんだり感動したりといった心の余裕はないに等しかった。

オフィス新大陸の方々の苦労は私の比ではない。倒れた人もいるという。誌面作りを見ていると、取材を100として誌面に現れるのはそのうち10か20といったところ。この本は並々ならぬ苦労の結晶なのである。

さてこの『ボードゲーム天国』は、以下のような構成になっている。

特集エッセンSpiel2002徹底レポート〜"天国"はそこにあった〜
 …世界最大のゲームイベント、エッセン国際ゲーム祭を豊富な写真でレポート。人物主体でつづられており、生の雰囲気に触れることができる。
第1章 ゲームセレクション99+
 …ファンタジー・冒険系など10のジャンルに分けてそれぞれ10タイトル程度、合計99タイトルをフルカラーで紹介。アヴェ・カエサルからフィスト・オブ・ドラゴンストーンズまで幅広い選択と、チャート式の図解が特徴。
第2章 オススメ・ゲーム実況中継
 …カタンから最新のBANG!まで、オフィス新大陸のメンバーがプレイした状況をレポート。それぞれのキャラクター付けがうまく、ゲームの本質を描き出している。
第3章 ドイツゲーム事情
 …ゲームを作る人たち、選ぶ人たち、遊ぶ人たちという章立てでドイツのゲームシーンを徹底解説。エッセンやニュルンベルクのイベント、ゲーム賞、ゲームサークルなど、本場のすごさを味わえる。
第4章 ボードゲームを始めよう!
 …初めての人がボードゲームを遊ぶにはどうしたらよいかアドバイス。ついで今後の日本のボードゲーム界のカギを握ると思われる4人の職業人にインタビュー。コラム。
第5章 ボードゲーム 知識の泉
 …全国のサークル、ショップ、ウェブサイトのデータベース。JGC、TGS、GMなどのイベントレポート、D3によるPS移植版紹介。
付録 「つる爺の爆笑!極楽大劇場」(マンガ)、人数・時間・対象年齢別索引、五十音順の総索引。また各章の冒頭にはクニツィアなど著名デザイナーから日本のファンへのメッセージとサイン。
特筆すべき点は、従来の国内ボードゲームコミュニティーの外にいた人たちを引っ張り出してきたことにある。特にカプコンの岡本専務や雄山閣の村上社長など、国内で新たなムーブメントを起こそうとしている人たち。彼らの視野は、ドイツで出版されているゲームを日本に紹介するというよりもむしろ、日本で面白いゲームを作るというところにある。

日本で面白いゲームを作るには、どうしても資本(お金だけでなく、人材やノウハウも含む)が必要となる。その資本を出せる数少ない人たち。従来の愛好者としては大手企業の影響力を僻むよりも、それだけ日本のボードゲーム界の可能性が開けたと喜ぶべきではないだろうか。

彼らにとってボードゲームはビジネスでもある。「ボードゲームは楽しくていいね」と言っているだけでなく、資本を投入して利益を上げるのが仕事になる。愛好者にとっては大好きなボードゲームが金儲けの道具にされることには嫌な感覚がつきまとうかもしれないが、彼らはプロとしてリスクを負ってやっているのだ。能勢さんや中野さんならともかく、一愛好者がとやかくいう問題ではない。

とはいえ、楽観的だとは思うがメビウス・バネスト・広島などのゲーム輸入を手がけるショップと食い合うことは、まずないような気がする。まず第一に、『ボードゲーム天国』の販売とオフィス新大陸の諸プロジェクトが成功すれば、ドイツゲームは今よりもメジャーになるだろう。そうすれば全体のパイが広がり、客を取り合うという事態はなくなる。

第二に、取り扱いアイテムに差異化が図られると考えられる。最新ゲームを扱う早さと少数でも対応できるフットワークの軽さはメビウス・バネスト・広島の右に出るものはいない。日本製のボードゲームをじっくりと数多く販売していくというスタイルならば、十分に両立可能だろう。愛好者にはエポック社の5タイトルの件が頭にあるため抵抗を感じるかもしれないが、方向性はずっと違う。

と、「とやかくいう問題ではない」と言いながらとやかくいってしまった。ビジネスに首をつっこんでいくつもりは、少なくとも私には毛頭ない。そこまでのリスクを負う覚悟はないし、仕事ではなく趣味として楽しんでいるからこそ見えてくるものもある。愛好者は愛好者として、新しい楽しみ方を見つけていこう。そういう形でも、日本にボードゲーム文化を根付かせることに寄与しうると信じたい。

やがて日本のクラマーが、トイバーが、クニツィアが現われるかもしれない。私はそれを心待ちにしている。名もなき一愛好者として…(※第3章が記名記事にならなかったことへの当てつけではない)。

〈バネスト中野さんの感想〉
個人的には、そろそろ日本人デザイナーが数名登場してもいいような気がします。そうすれば応援しますよ、ハイ。
 現状、輸入品に頼っているわけですからね。 ただ現在のゲームがらみの出版社の事情を考えると、どうなるか分からないのでリスクを回避していたり、たとえ計画があっても予算枠が少なく単発の企画だったりで、どうもインパクトに欠けます。
 この手のものは、キッカケと継続的に供給できる資本、それに計画的な時間が必要でしょう。
 あと日本の玩具業界は既にキャラクターがないと何もできないので、そうした部分でも魅力が無いと思われているのかもしれません。

「ボードゲーム天国01」発売

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●  国内で久しぶりとなるボードゲーム書籍で、待ちに待った「ボードゲーム天国(パラダイス)01号」がやっと一般に入手可能となり、各書店やオンラインショップで購入できるようになりました。税抜2800円。カラーページをふんだんに使ってたくさんのゲームを紹介しつつ、国内外のゲーム事情を詳しく報じています。膨大な情報量に圧倒される大著です。(03/01/25)

 ボードゲーム天国(パラダイス)01号

 2003年1月25日初版発行/ISBN4-8035-0347-8

 編著:オフィス新大陸/発行所:竹内書店新社

 発売:(株)雄山閣

 関連リンク:

  ・紹介文(K.G.B.)

  ・ボーパラ外伝(当サイト)

  ・書評(オンライン書店bk1)

「サムライ」PC版登場

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●  クニツィアが日本の戦国時代を題材にした陣取りゲーム「サムライ」のPC版(英語)が今春発売され、「IYEYASU」や「ASHIKAGA」との息詰まるような争奪戦がひとりでも楽しめるようになりました。「サムライ」は日本各地にある米、仏像、カブトを勢力争いでバランスよく集めていく戦略性の高いゲームです。ハンス・イム・グリュック社から発売されており、「このゲーム最高!」「幸せなハンス」などの日本語の箱書きも楽しいです。発売に先駆けて、体験版(13Mb)がホームページでダウンロードできます。戦略をじっくり研究して、腕を磨きましょう。(Klear.com

Games We Play トップ10

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● Games We Playトップ10Games We Playがサークル内の投票で1993年から行っているベストゲームトップ10の2003年分を発表しました。新作だけでなく旧作も含めてベストゲームを出しているところがポイントです。2年連続トップだった「カタンの開拓者」が「プエルトリコ」に座を明渡しました。新作ではプエルトリコのほか、ノーチラスと海賊の入り江が入っています。一昨年の新作で圏内に残ったのは、エボとカルカソンヌでした。→これまでのトップ10(Games We Play)

 1位(−) プエルトリコ(Seyfarth/Alea)

 2位(1) カタンの開拓者(Teuber/Kosmos)

 3位(4) エル・グランデ(Kramer,Ulrich/Hans im Gluck)

 4位(2) カポネ(Caines,Watts/Amigo)

 5位(−) ノーチラス(Ditt/Kosmos)

 6位(6) アクワイア(Sackson/Avalon Hill)

 7位(3) エボ(Kayaerts/Eurogames)

 8位(−) 海賊の入り江(Randle&Stahl/Amigo)

 9位(9) ホーマスツアー(Bontenbal/Jumbo)

 10位(8) カルカソンヌ(Wrede/Hans im Glueck)

  ※カッコ内は昨年の順位。メジャー度の低いゲームは当サイトのレポートにリンクしています。

フェドゥッティ、ムーンと合作

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●  「操り人形」の作者フェドゥッティは、アラン・R・ムーンと合作で新作「オーク―勇敢なる者たちへ(De
l'Orc pour les braves)」を発売する予定であることを発表しました。盗賊・オーク・スケルトン・ゴブリンを一斉に交換して戦力を揃えます。その後カードを順番に出して勝敗を決めていきます。4〜7人用、プレイ時間約40分。フランスのメーカー、アスモデから今春に発売予定です。シャハトやコロヴィーニなど、数多くの名デザイナと合作してきたフェドゥッティですが、ネームバリューはもちろんのこと、それに見合った内容もあるものとして期待されます。(Faidutti

プエルトリコ〜ゲームのテーマについて(2)

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「忘れちまったのか? オレたちの国は何もなくても世界一の国さ!」
                       (ウェストサイド・ストーリー)

 プエルトリコ(Puerto Rico)は、ゲームフリークをターゲットにしたラベンスバーガーの新ブランド、アレアから2002年に発売されました。試作段階から非常に評判で、ドイツゲーム賞金賞、エッセン金の羽賞、年間大賞最終ノミネート、スイスゲーム賞、アメリカゲーム100選といったアワードを軒並み獲得しました。日本国内でもゲーム愛好者を中心に高く評価され、全国各地で数多くプレイされています。もはや2002年のゲームシーンを語る上で欠かせないゲームであると言えるでしょう。

 開拓者、市長、建築家、監督、商人、船長、金鉱掘り…これら7つの職業から1人が選んだものを全員がプレイするという新しいシステムで、どの職業を適切なタイミングで選ぶかというところで大いに考えさせられるところが人気の秘密のようです。勝ち方がいろいろあり、ゲームするたびに展開が変わるところも魅力になっています。

 爆発的な人気をほこるゲームですが、その舞台となっているプエルトリコの歴史については、ドイツ人も含めてあまり知られていないのが現状です。高校の世界史レベルでも「米西戦争でスペイン領からアメリカ領になった」くらいのことしか書かれていません。しかしその歴史をひもとくとき、ゲームのプエルトリコが扱うテーマを考えるべきであることに気づかされます。

 結論から先に言うと、2つのどちらかになります。

(1)植民地政策の悲惨な歴史にかんがみ、奴隷労働者の苦痛を再現するようなゲームは、不謹慎である。
(2)現プエルトリコ人の精神的な支えとなる生産活動なので、このようなゲームも肯定されてよい。
相反する結論ですが、どちらがよいのか以下の説明を読んでみなさんなりに考えてみていただければ幸いです。

 プエルトリコはカリブ海に浮かぶ小さな島で大きさは四国の半分くらい。現在はアメリカ合衆国の自治領となっています。首都はゲームのボードにも書かれていますがサン・フアン(San Juan)。カトリックの聖人から取った名前です。当初は島の名前がサン・フアンで、この港町がプエルト・リコ(port-rich豊かな港の意味)でしたが、いつの間にか逆転してしまいました。人口約400万人、4分の3がスペイン系の白人、残りがアフリカ系とムラートと呼ばれる混血です。

 平均年収は約10万円。ゲームでは多品種が栽培できますが、実際はサトウキビ栽培のモノカルチャーで、ハリケーン1つで年収がなくなってしまう貧しい土地柄です。経済的にはアメリカに依存し、安い労働力を求める企業が進出していますが、貧富の差が大きく、200万人がアメリカ本土に出ています。本土でも英語をあまり話せない言葉の壁のため、低賃金で働いている人が多く、麻薬や犯罪に走る人も少なくありません。冒頭のウェストサイド・ストーリーは、プエルトリコ系のギャングのセリフです。スラムに住むギャング団の抗争と、その中で愛しあってしまったトニーとマリアの悲恋には、抗争という悲劇以前に、アメリカ社会から疎外されているという悲劇があるのです。

 さて、このゲームの舞台設定はコロンブスがプエルトリコを発見した1493年から約半世紀後とされています。そのすぐ後にこの島はスペインによって征服されました。タイノ族と呼ばれる先住民族がいましたが、スペインによる搾取とカトリックへの改宗強制のため反乱を起こし、6000人が殺されました。これがプエルトリコ史最初の受難です。これでプエルトリコは一時期、ほとんど無人の島になってしまいます。

 それでもヨーロッパに最も近いという地理的な条件と、農地に適する地形が多かったことから、スペインを中心に次第に入植者が入ってきます。このときに奴隷としてアフリカから黒人も連れてこられましたが、農業の性格上奴隷はそれほど必要ではなく、となりのキューバに比べてはるかに少なかったといいます。だいたいこの時期がゲームの舞台です。プレイヤーは、入植してきたスペイン人ということになります。ちなみにこの時期の主要産品はショウガだったといいますから、ゲームには時代錯誤があることになります。

 武力で先住民を制圧し、奴隷をひきつれて我が物顔で入植してきたスペイン人…このことを知るならば、心やさしい人間はプエルトリコのゲームをするのにためらわざるを得ない―これが結論の1番です。

 しかしこれは16世紀の話。ここから約300年間、定住したスペイン人入植者は「プエルトリコ人」になりました。遠いスペインから離れて自国を開拓し、海賊やイギリス・フランス、後にはアメリカの武力攻撃を必死で守りながら、小規模ながらも農業で生活を営んでいました。やがて、そのスペインから独立しようという機運が高まります。長いときを経て、もはや彼らはスペイン人ではなかったのです。

19世紀末、カリブ海諸国は独立にむけてあちこちで戦争を始めました。プエルトリコ人も旧式の武器でスペイン軍と戦い、多くの犠牲を払いながら少しずつ自治を獲得していきました。スペインの体力が衰えていたこともあり、1898年3月には自治政府と評議会の設置を認めさせるところまでこぎつけました。

 ところが、混乱に乗じてアメリカが攻めてきます。自治政府ができた1ヵ月後、アメリカがスペインに宣戦布告し、米西戦争が始まります。米軍は破竹の勢いでプエルトリコに侵攻し、わずか20日程度でプエルトリコを征服してしまいます。これで折角の自治政府と評議会が解散させられ、米軍の支配下におかれます。名前は「ポルトリコ」に変えられ、通貨はペソからドルに変えられます(名称は後に戻されるが、通貨はそのまま)。これはプエルトリコ人にとって屈辱にほかなりませんでした。これがプエルトリコ史2つめの受難です。

 そこから現在にいたるまでの100年間は、次第に自治が許されてきたとはいうものの不自由なことが多く、またアメリカ資本が土地を買い漁ったため、ほそぼそと農業を営んでいたプエルトリコ人は貧困のどん底に落とされます。プエルトリコ独立運動は続いていますが、経済的にアメリカに依存しているため、全会一致で立ち上がりにくいのが現状です。現在では州昇格派、自治派、独立派に分かれているようです。その中独立をめざす過激派がテロを起こしたり、プエルトリコ領のビエケス島で米軍基地問題(沖縄のような問題です)が浮上したりするなど、事態は決して安定していません。プエルトリコは今も、貧困に追われながら、道なき道を歩いています。

そこで冒頭のウェストサイドストーリーのセリフです。彼らは貧困と戦いながら、決して誇りを失わず、プエルトリコ人として生きています。その誇りの根本は、何百年も前から行われてきたスペイン人の開拓です。「我々の祖先は、幾多の困難を乗り越えてここまでやってきた。我々も負けていられない!」―プエルトリコ人の誇りの原点を描いたこのゲームは、肯定的に捉えられるべきだ―これが結論の2番です。

現代の人道的見地からすれば、彼らの開拓には多くの問題がありました。しかしだからといってそこから目をそむけるのは、愛国心から日本の戦争犯罪を隠蔽しようとする、自由主義史観と変わりません。何に問題があったのか、我々は今後何をしてはならないのか、それを十分議論するためにも、知っておかなければならないことがあります。そんなことを考えながらのゲームは、あまり楽しくないかもしれませんが…。

この2つの結論、私はどちらにも一理あると思い決めかねています。みなさんはどうお考えになりますか? ゲームをするときにそんなことを少しでも考えていただければ幸いです。

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