ボルカルス(Vulcanus)

 このエントリーをはてなブックマークに追加    

たとえ東京が焦土となっても

volcanus.jpg

全身から溶岩を噴出しつつ東京を襲う怪獣と、怪獣緊急対策本部の戦いを描く1対多のボードゲーム。連作ボードゲームプロジェクト『KAIJU ON THE EARTH(カイジュウ・オン・ジ・アース)』の第1弾となる作品で、デザイナーの上杉真人氏(『ペーパーテイルズ(ヴォーパルス)』)ほか豪華制作陣で作られた。先行予約のクラウドファンディングは予想を遥かに超える1167人が709万円を出資し、注目の高さを物語っている。

3枚のゲームボード、各自のプレイヤーボード、テキストいっぱいのカードが並ぶコンポーネントに怯んでしまう人もいるかもしれないが、砂時計を使うこともあってプレイ時間は長くない。プロデュースした渡辺範明氏(ドロッセルマイヤーズ)によれば、ルール説明は20~30分くらいにしてカードの説明を敢えてせず、ゲームを始めたほうがいいという。実際、始めてみると複雑さは感じられない(正確には、感じる余裕がない)。

ボルカルスが渋谷周辺に着いたところからゲームは始まる。すでに緊迫した状況である。ラウンドの進行は、怪獣緊急対策本部のプレイヤーが相談してカードをプロットし、その後ボルカルスのプレイヤーがカードをプロット、順番にめくって解決するという流れだ。

カードが実行される順番は4人プレイの場合、プレイヤーAの1枚目、怪獣、プレイヤーAの2枚目、プレイヤーBの1枚目、怪獣、プレイヤーBの2枚目、プレイヤーCの1枚目、怪獣、プレイヤーCの2枚目。A、B、Cの順番もプレイヤー間で相談して決める。攻撃のための予算をとったり、市民を避難させたりするのは先になるだろう。

問題は、怪獣緊急対策本部の相談を、ボルカルスが聞いてからプロットできるということだ。プレイ感が似ている『パンデミック』との大きな違いがこれである。予算を取っていれば先制攻撃され、避難しようとすれば先回りされる。そのため相談内容は時にぼかさなければならない。しかも相談時間は砂時計で制限されている。焦りやミスコミュニケーションでプロットミスも出る。

しかし制限時間があるのはボルカルスも同じで、裏をかいて行動するのは容易でない。全員避難して攻撃が空振りということも。しかしボルカルスは溶岩を撒き散らしながら、ゲームの始めに密かに指定された街(陥落させると勝利に大きく近づく)に向かう。しかも溶岩を撒き散らすと進化を遂げ、ただでさせ強力なアクションがさらに強化されるのだ。

怪獣緊急対策本部は消火や救出、怪獣への攻撃をするたびに「防衛」トラックにコマやタイルが置かれ、ボルカルスは市民を殺したり街を陥落させたりするたびに「被害」トラックにコマやタイルを置く。最後のマスまで先に埋めたほうが勝利する。序盤はボルカルスが圧倒的な力でマスをどんどん埋めていくのに、怪獣緊急対策本部が追いつけるかの勝負である。

「ボルカルスが六本木に向かっています! 六本木には市民がまだ残っています」「仕方ない、六本木はどうせカップルばかりだろ!」「ひどい......」「それよりも兵器の開発を優先しよう!」ボルカルスのプレイヤーすらも苦笑いする非情プレイで「特殊冷凍弾」を発射。最後の最後に「人工降雪作戦」まで成功させ、東京を陥落させたボルカルスを寸でのところで撃退。多大なる犠牲を払っての人類の勝利であった。

映画の登場人物になったかのような没入感。怪獣緊急対策本部側には役職がいくつかあるので、ボルカルス役も含めて役割を交替すれば、新たな気持ちで、さらにレベルの高い戦いを繰り広げられそうだ。『シンゴジラ』を繰り返し見たくなるかのように。

ボルカルス
ゲームデザイン・上杉真人、イラスト・開田裕治&中村豪志
アークライトゲームズ(2019年)
2~4人用/10歳以上/60~80分

mechanicaJ.jpgホビージャパンは1月中旬、『メカニカ(Mechanica)』日本語版を発売する。ゲームデザイン・M.フラナガン&E.ホブデイ&M.セードマン、イラスト・A.S.デストアほか、1~4人用、10歳以上、45~60分、7000円(税別)。

リソニム社(アメリカ)から今秋発売されたばかりの新作。ロボットを生産してご家庭に届ける工場管理ゲームで、キックスターターで2356人が13万6千ドル(1470万円)を出資して製品化された。

生産するのは埃まみれの住居をピッカピカにする、3種類の整頓ボット。プレイヤーは工場管理者となり、整頓ボット生産施設を監視し、生産性の高い工場で最高のボットを製作し、住居へ届けよう。

最初、向上には単純な製造ラインしかない。毎ターン、組立ライン上で整頓ボットを作るとともに、新たな設備を購入してパズルのように配置し、生産量を増やしたり、出荷数を増やしたり、高級な新型ロボットを生産したりする。他の工場との品質競争に打ち勝ち、最も利益を上げるのは誰か?

内箱トレイを使った設備のショップは回転式で、お目当ての装置を安く購入できるか、箱に落っこちてリサイクルされてしまうかは運次第。ほかにもかわいいロボットコマなど、コンポーネントも魅力にあふれている。また、別途AR(拡張現実)アプリを使うことで、工場が稼働している状況をカメラをかざしてアプリ上で確認して楽しむことができるなど、デジタルと融合した遊び方もできる。

新たな設備を加える『発明品』と、プレイヤーに個別の目的を与える『監視官』という2つのミニ拡張も同梱されており、リプレイアビリティもある作品だ。

内容物:工場ボード4枚、ショップボード1枚、 設計図15枚、大型トラック6枚、巨大トラック7枚、コイン(1、5、10、20)、 アルマンド-0カード、金庫4個、装置9種類各3枚、1人用ゲームチップ、分岐10枚、早見表4枚、整頓ポットモデル72枚、取扱説明書1部 ほか

mechanicaJ2.jpg

2019年のボードゲーム各賞受賞

 このエントリーをはてなブックマークに追加    

新作のリリース数が国内外で急増中の今、1年間のボードゲーム賞を縦断的に見ることはますます重要性を帯びている。そこで世界各国で今年発表された30ほどのボードゲーム賞をまとめ、5回以上登場したタイトルは赤でマーキングした。未発表のものは、発表があり次第追加する予定。

言及回数は以下の通り。昨年は『アズール』が22回と席巻したが、今年はゴールデンギーク賞に多選された『ルート』が11回で最多となっている(昨年の『グルームヘイヴン』のポジション)。また昨年も5回以上言及された『ザ・マインド』が今年ドイツ語圏外でも評価され、通算で15回になった。一方、今年の話題作『ウィングスパン』は英語圏で評価されず回数が伸びていない。

  • ルート 11回
  • ブラス・バーミンガム 8回
  • クロニクル・オブ・クライム 8回
  • キーフォージ 8回
  • テオティワカン:シティオブゴッズ 8回
  • ザ・マインド 7回
  • 西フランク王国の建築家 7回
  • ディテクティブ 6回
  • ジャストワン 6回
  • クアックザルバー 6回
  • エバーデール 5回
  • ウィングスパン 5回

『ルート』日本語版は現在版元品切れ中。『ブラス・バーミンガム』、『テオティワカン:シティオブゴッズ』、『ザ・マインド』、『西フランク王国の建築家』、『クアックザルバー』、『ウィングスパン』は日本語版が流通している。

リンクフリー このバナーをお使いください