ドイツ年間ゲーム大賞選考委員長のコメント

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昨日、ドイツ年間ゲーム大賞のノミネートとともに発表された選考委員長T.フェルバー氏のコメントを翻訳。



2015年のボードゲームについて、ドイツ年間ゲーム大賞選考委員長のコメント
ドイツ年間ゲーム大賞の選考委員メンバーのように毎年たくさんのボードゲームをプレイしていると、次のような認識にならざるを得ない。すべての要求と好みとグループの状況を満たす完璧なボードゲームなどないと。

しかし選考委員が毎年挑戦していることは、そのような完璧なボードゲームに最大限近いものを見つけることである。選考委員会の目的である「文化財としてのボードゲームを家族や社会に広げること」をさらに促進し強化するのにふさわしいかどうかを考慮しつつ。

去年の夏から我々選考委員はずっと集中してたくさんのボードゲームの魅力、コンポーネント、イラスト、ルールについて精査してきた。そこでたくさんの素晴らしい作品に囲まれた。我々が安心したのは、デザイナーのアイデアの豊かさとイノベーションの喜びがほとばしり出ていることだ。贅沢に楽しめたことも多かったが、実を言うと少し退屈することもあった。こうしてとうとう、ボードゲーム製品の干し草の山から、いくつかのよいボードゲームを抜き出した。ただし全ての要求と状況を満たす完璧なボードゲームはないのだから、選考委員会は毎年いろいろなタイトルを推薦リストに入れ、ボードゲームに関心のある全ての人が自分の要求に応えるボードゲームを見つけられるようにしてある。

昨年と同様、2015年は合計25タイトルが我々のリストに入った。どれもちょっと特別なものばかりである。そして御存知の通り、これらを色分けした3つのカテゴリーに分けた。3つのカテゴリーでそれぞれ3タイトルずつ、大賞にノミネートしてある。赤は全ての人向き、つまり家族のいない人も含まれる。青はキッズゲーム、灰色はボードゲームのルールを理解して遊ぶ経験がいくらかある人向けのボードゲームである。赤と灰色の境界線は、それぞれのボードゲームの世界に入り込むために必要なエネルギーや要求の多さで引かれている。

さて、選ばれた作品の賛辞に移る前に、ひとつだけ言っておかなければならないことがある。欠陥のあるボードゲームの数が、依然とても多いことだ。欠陥とは編集作業であったり、ルールの記述であったり、コンポーネントの質であったり、イラストであったりするが、これらはボードゲームの楽しさを引き出すというよりはむしろ、阻害することになる。最終確認であまりにも注意が払われておらず、あまりにも拙速に市場に出されたという印象を受けることが残念ながら非常に多い。そのような小さな欠陥をもったボードゲームにも、細かいミスも擦り損じになるぐらいゲームの価値と楽しさが傑出しているために、リストに入れたものもあったが、選考にはいつもながら苦心した。もちろんその反対に、見かけ・イラスト・ルールは完璧でも、平均的な楽しさしかなく、誰の感情も引き出すことができず、それゆえに選ばれなかったボードゲームもある。それはまるで、ハリウッド映画で人気俳優と巨大な特殊効果を使って、結局スピリットがないようなものである。

また、ルールブックがなぞなぞの本みたいで、回りくどいテキストを解読してもゲームのシステムにあまり関係なかったりしてリスト入りを見送ったボードゲームもある。中には自分のお気に入りのボードゲームがリストにないという人も当然いると思う。いつも通り、選考委員会は絶対性を主張するのではない。ボードゲームの評価は、主観的な事柄である。時間をかけた多数決の手続きで、選考委員会は今回も期待の高かったタイトルを分けなければならない。余談ではあるが、否決された選考委員には深い精神的な傷跡を残すことにもなった。しかし競争が激しいというだけで、リストは明快にしたいと思っている。

ドイツ年間ゲーム大賞と年間エキスパートゲーム大賞へのコメント
赤と灰色のカテゴリーでノミネート・推薦されたボードゲームを見ると、改めて多くのタイトルの国際的な背景に目が行くだろう。後から確認したことだが、推薦された15タイトルのデザイナーは少なくとも12カ国の出身である。ドイツのほかにアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国、オーストリア、イタリア、フランス、ベルギー、オランダ、東フリースラント出身の方もいる。例えば『街コロ』のように、ドイツの出版社もライセンスを外国から購入して成功することが多くなった。我々は努力して、リストに多様性をもたせ、本当に何でも揃っているようにした。古典的なボードゲーム、ダイスゲーム、配置ゲーム、カードゲーム、パーティーゲーム、2人用ゲーム、にぎやかなコミュニケーションゲーム、静かな思考ゲーム。リストが素晴らしいのは、ゲームの雰囲気がさまざまで、その多彩さによって、ゲームの楽しさが文化財やホーム・エンターテインメントのツールになることである。

今年、赤い賞の選考委員会は『究極のワンナイト人狼』において初めて、アプリがアナログゲームの補助として使われゲームを豊かにする作品を推薦リストに入れた。巷でよく言われるデジタル化とともに、これが実際にトレンドのようなものになるならば、何よりも古いアイデアをリサイクル・改訂して全く新しいゲームが生まれることになるだろう。その点で例えば、ノミネート作品『ブルームサービス』の基本フレームは『魔法にかかったみたい』に遡るが、大きく変更されているために、完全に新しく、別もので、ほかにない作品が生まれている。

ドイツ年間ゲーム大賞と年間エキスパートゲーム大賞の推薦リストを見ると、ボードゲームのシステムがおなじみの世界に我々を誘うことが分かる。『デウス』のずっと昔の神話的な世界から、『ルーニークエスト』の現代的なSF要素が入ったファンタジー世界まで実にさまざまだ。特に自信をもって『アルルの丘』は、ウヴェ・ローゼンベルクが地域の歴史を事実に基づいて、遊びごたえのある、よく考えられた建設ゲームにしたもので、付録の本には歴史的な背景が考察され、ほとんど総合芸術作品といってもよいだろう。一方『マルコポーロの足あと』のように、こういった要素をルールの枠組みに落とし込み、ノミネート可能なエキスパートゲームの水準以上になった作品もある。

ドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされた作品では、サプライズでいっぱいの西部劇にプレイヤーが取り組み、都市計画担当として街の大きなプロジェクトを実現し、我慢のいる方法で数字カードを協力して並べる。この選考で改めて強調したいことは、小さなゲーム箱に詰め込んだ十分に素晴らしいアイデアに、ドイツ年間ゲーム大賞のポテシャルが内在するということである。年間エキスパートゲーム大賞にノミネートされた3作品は、錬金術師の配達や、ギリシャ神話世界の組織や、中世のいろいろな職業や立場のネットワークを結ぶことをゲームにしている。

やや陳腐に聞こえることは分かっているし、ほとんど毎年書いていることだが、事実なので言っておきたい。選考過程と内部議論で明らかなことは、ドイツ年間ゲーム大賞と年間エキスパートゲーム大賞のどちらにも、一番人気はない。ベルリンでの記者会見で大賞が発表される7月6日と、その直前に投票が行われるまで、エキサイティングな期間が続く。それまで選考委員はは休憩ではなく、ノミネートされた作品に引き続き集中し、直接比較したり、さらにたくさんの人達と遊び続ける。大賞にふさわしい作品が結晶することを信じて。

トム・フェルバー
ドイツ年間ゲーム大賞選考委員長

Kommentar des „Spiel des Jahres"-Vorsitzenden zum Spielejahrgang 2015

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