山形新聞連載コラム(3):家庭をつなぐボードゲーム

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3月21日の日曜随想掲載分。前回はこちら



 新型コロナウィルスで世界的に混乱が続く中、臨時休校・外出自粛による「巣ごもり需要」でボードゲームが注目されている。日本トイザらスではボードゲームやカードゲームなどの売上げが前年同時期4割増、博品館(銀座)ではパズルゲームやボードゲームの問い合わせが増えているという。WHOが「ゲーム障害」を依存症に認定し、香川県がネット・ゲーム依存症対策条例を制定するなど、健康への悪影響が取り沙汰される中、親としては子供をテレビゲームやインターネット漬けにしたくないという思いがあるのだろう。

 9年前、東日本大震災後にもボードゲームが注目されたことがあった。「節電ブーム」と「家族の絆」によって、一つの部屋に集まってボードゲームを遊ぶことがもてはやされたのである。電気を使わず、人と人がふれあって遊べるボードゲームはそれ以来、認知度が急激に高まった。それと比べると今回はみんなで過ごすことが主眼ではなく、対戦相手が必要なボードゲームは、一人でできる娯楽よりも分が悪そうだ。

 それでも子供にボードゲームを買ってくる親は「頭が良くなりそう」「知育にいい」と思っている節がある。実際、「脳が活性化し、分析力・協調力・集中力・記憶力などが育まれ、家族みんなで遊ぶことで、愛着と共感性が強まる」(東北大学・川島隆太教授)といった知育効果も謳われているが、肝心な点は、子供が自ら遊びたいかどうかである。親が知育目的で買ってきたボードゲームは、学習ドリルと同様、たいてい見向きもされない。それはもはや遊びではなく、お勉強になってしまうからである。

 筆者は県の家庭教育アドバイザーとして、学校などで親や祖父母を対象にお話をする機会があると、何でもいいから子供と一緒に楽しく遊ぶよう強く勧めている。散歩、自転車乗り、おいかけっこ、草花集め、虫取り、釣り、キャッチボール、砂・泥遊び、木登り、石投げ、そり、雪だるま作りなど、昔ながらの外遊びが一番だが、昨今の交通事情や治安事情から難しくなっているのが現状である。そこで代わりに勧めているのがトランプやボードゲームだ。トランプだったら神経衰弱や七並べなど、だいたい誰でも分かるだろう。ボードゲームなら『ブロックス』『ラミィキューブ』『ウボンゴ』あたりが入手しやすい。

 これらはまず第一に、手軽である。簡単なものなら平日でも夕食が終わった後、寝るまでの15~20分くらいで遊ぶことができる。第二に、部屋にこもりがちな子供をみんなのいる部屋に自然に留めておける。中学生ぐらいにもなれば親子の会話もなくなりがちだが、ボードゲームを遊びながら、学校であったことや友達のことなどを話してくれるかもしれない。第三に、実はこれがいちばん大切なことだが、親も本気で楽しめる。子供にただ付き合っているだけではつまらないし、子供もそのことを見抜いてしまう。勝負に真剣になっている表情、勝ったときの笑顔、負けたときの悔しい顔......親が普段見せない人間らしさを、子供は見るのが大好きだ。

 一緒に遊んだ思い出は、親や祖父母が亡くなった後も子供の心に一生残る。筆者も、祖父と将棋やオセロをしたことを今でも覚えている。いつもコテンパンに負かされていたが、今思い出すと「悔しい」という感情ではなく、温かい、懐かしい気持ちになれる。今の世の中、親はスマホ、子供はゲーム機を見つめるだけの生活では、大人になってから親と一緒に何をしたか思い出せない。子供がやがて親となったとき、その子供と何をして遊ぼうかというときに、自分が親や祖父母と遊んでもらった記憶が頼りになるはずだ。

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